釜山の空港でナンパした韓国人女性とデートして「その日の雰囲気」でロマンスした話

機内アナウンスが流れ、着陸態勢に入った。

台北・桃園空港を離陸するときに窓の外の景色を、何枚もカメラに収めていた韓国人カップルは、釜山の街を窓から眺めることもなくスマホの写真を見ていた。

誰かにとってのホームは、誰かにとってのアウェイだ。

通路側の私は、そのカップル越しに夜の釜山の街を見下ろした。眼前に飛び込んできた初めて見る釜山の街並み。海、高層マンション、ショッピングモールと思しきもの…。

どのあたりを飛行しているかは、当然わからないが、想像以上に大きな街だと思った。ほどなくして釜山・金海国際空港に着陸した。

私の斜め前。最前列に座っていた台湾人のおじいさんが杖をついてタラップを先頭でゆっくり降りていた。キャビンクルーも、私の前でタラップを下っている台湾人女性も、おじいさんに手を貸さない。

台湾人女性を追い抜いて「大丈夫ですか?」と、おじいさんに手を貸して、タラップを降りて一緒にバスに乗った。

おじいさんは小さい声で「謝謝」と言った。

前日に台湾人彼女と「新感染」という韓国映画を見た。ソウルから釜山に向かうKTX(新幹線)でゾンビが出てきて右往左往するパニック映画だ。

その作品は「自分の命を顧みず他人を助ける犠牲心を持てるか」がテーマだと思うのだが、私の感想はただのパニック映画で、犠牲心に言及する程度の作品ではなかった。

それを彼女に伝えると「あなたは全然優しくない」と言う。ただのパニック映画としか感想の持てない私は、彼女の中で冷たい人間らしい。台湾人は単純なコンテクスト、いわゆるベタなストーリーが好きだ。

そんないきさつもあって、前述のおじいさんに親切にしてみた。もちろん、私は聖人じゃない。とても打算的な人間だ。「この親切が釜山ツアーでいい形で戻ってきますように」と考えていた。

しかし、それはとても早い形で実現することになる。

入国審査を抜け、通信会社のカウンターを探す。金海空港は、ソウル・金浦空港によく似ていた。プランをよく確認せずに、とりあえず事前に調べて出てきたカウンターに決めた。

受付の女の子は理知的な顔をしてるけど対応は事務的で、ニコリともしなかった。

スマホのネットワークを確認した。一瞬、迷ったけど、受付の彼女に手紙を渡そうと思った。

恐らく連絡はこないだろうけど、こんなの来なくて当たり前だ。普通は来ない。とりあえず、釜山への挨拶代わりにアプローチしよう。実は、台北でエアポートバスに並んでいた2人組の韓国人女性がいたのだが、積極性が出ずに声をかけなかった。

これから参加者を率いてナンパツアーをするのに現地に来て、まごまごしている時間はない。

彼女に手紙を書こう。”韓国人はロマンチックな口説きに弱い”とツアーにゲスト枠で参加する凄腕海外ナンパ師から聞いていたので、ロマンチックに書き上げた。

「今日は君の笑顔が見れなかったから、今度は君の笑顔が見たい。僕が君を笑顔にするよ」

彼女は受け取ると特に笑うこともなく、おお、サンキューというような調子だった。まぁいい、とりあえず手紙を渡せたんだ。

空港から電車を乗り継いで、釜山最大の繁華街・ソミョンに取ったモーテルにチェックインをする。

周囲は、居酒屋とノレバン(カラオケという意味だが恐らくキャバクラ)が密集した眩いネオンの卑猥で雑多なエリアだった。

早く街に出たいという気持ちを抑え、小一時間ほど仕事をしてシャワーを浴び、腹も空いたし出かけるかと準備をしている時だった。

カカオトークの通知が鳴った。カカオトークは韓国人が使うLINEのようなメッセンジャーアプリ。

「カカオ送ってくる韓国人なんて”まだ”いないぞ」と思ってスマホを見て驚いた。

「釜山で楽しくすごしてますか?Kawaiiメッセージありがとう」

通信カウンターの子だ!彼女に手紙を渡したことすら忘れていたが、テンションが上がらないわけはなかった。「釜山に歓迎されている!」そう思った。

そのあと、街へ繰り出し、1人で釜山の韓国人たちと関わりあって、確信に近いものをもってして「私と釜山は相性がいい」と感じた。

****
翌日。昼過ぎに起きて地下鉄で広安里というビーチに向かった。

ビーチ沿いにカフェがたくさんあると聞いたので、海でも眺めながら仕事をしようかと。

前日はモーテルを出た後に、バーでグループに混じってダーツをしたり、屋台で見知らぬ男性と2人で飲んだりと結局、朝の4時まで釜山の繁華街をブラブラしていた。痛快な夜だった。

釜山の人々の距離感は台北に近い。首都ソウルとは別物だ。昨晩の遅い夕食。テジクッパという釜山名産の豚骨スープの有名店に行ったときだ。「うわーおいしそう」なんて言いながら笑顔でお客が入ってくる。

「おばちゃんこっちテジクッパ3つね!」
「はいはい、今持ってきますよ。ちょっと待ってね」

韓国語は少ししか理解できないが、こんな感じの会話をしていたはず。人々の距離感は近いし、表情が明るい。ソウルや東京よりもオープンな街だと感じた。

オープンな街ほど、自分もオープンになりやすい。これは海外25ヵ国を旅をして得た1つの結論だし、勇気をもってアウェイの地で外国人と仲良くなるうえで1番必要なものだ。

広安里へ到着して、ビーチを眺めてカフェに入る。あいにく曇っていたが、暑くも寒くもない心地よい気温だった。私の住んでいる台北も海は遠くないが、残念ながらビーチがない。

この広安里というロケーションで釜山をもっと気に入った。

前日の通信カウンターの子とのカカオは続いていた。

「今日は何してるの?」
「仕事が休みで予定はないよ」
「それならご飯食べない?僕は広安里のビーチにいる」
「じゃあ行くね。1時間半後に着くけど大丈夫?」

デートの約束は、あっさりと決まった。ちょっと考える。ナンパ師的なセオリーだと、ベッド(寝れる場所)から逆算して宿泊先がある繁華街・ソミョンで会うほうがいいだろう。

この江ノ島のような広安里という街にも見たところモーテルがいくつかあるが、初めて来た場所で臨機応変に対応できるとも限らない。

日が落ちてライトアップされた横浜ベイブリッジのような広安里大橋を見て「ここで彼女とデートしたい」と思い、広安里で彼女を待つことにした。

初めての街に来て、せっかく綺麗な夜景があるのだからデートを楽しみたいと思った。寝たいだけなら、ナンパ師的な”ベッドからの逆算”が重要だが、私はいつも”自分が楽しむこと”を優先する。アウェイの地では特に。

カフェで仕事をしながら彼女を待つ。夜になり気温が下がって肌寒くなり、いつも台北でアイスコーヒーを飲む私もホットラテを飲んでいた。あのカフェの名前と場所は忘れないだろう。

彼女がカフェに入ってきた。前日の事務的な表情とは打って変わって、ニコニコしながらテーブルにやってくる。溌剌とした表情と結んでいた髪を下ろしていて、前日よりも魅力的だった。

「今度は僕が笑わせるよ」って手紙に書いたのに、すでに笑ってるじゃないかと思ったけど。

カフェを出て、散歩していた時に見つけた近くのお店に向かったが、彼女はプルコギが食べたいようで別の方角に広安里の大通りを歩いた。

普段は、彼女は内勤で事務をしているらしい。手紙を渡した前日は、通常と違い受付カウンターにいたとのこと。釜山国際映画祭の開幕前日だった関係で、人員が必要だったとのこと。ラッキーだ。

「もしかしたら僕は映画祭に出る俳優かもよ?」なんてくだらない冗談にも彼女は、楽しそうによく笑った。「ははは」って元気に笑う女性は大好きだ。

ビーチの端のほうで見つけたプルコギ屋に入る。釜山のプルコギはソウルとスタイルが違うらしい。

台湾から来て中国語が話せると言うと、彼女は、英語も中国語も喋れるなんて本当に賢いねと褒めてくれた。私は、韓国語も元々は漢字だから単語によっては日中韓の発音が似てるんだよと得意げに話す。

彼女は、話を聞きながらプルコギの食べ方を教えてくれたり、手際よく肉を焼いてくれた。

韓国人女性は、こういうシーンで男性のためによく働いてくれる。日本人女性みたいだ。こうして異国のレストランで現地の女性にオーダーから何から、お世話をしてもらうのはとても尊いことのように思う。

ベトナムはフーコック島で、何でも葉っぱで包む現地料理に苦戦する私に、ベトナム人女性が器用に葉っぱで包んで食べさせてくれたのを思い出した。

「もう1本飲む?場所変える?僕はもう少し飲みたいんだけど」
「じゃあ出ようか」

****
プルコギのあとは、クラフトビールのバーレストランに連れて行ってくれた。私は、外国人として台北に住んでいるが、台湾人女性たちにリードされるほど疎くない。

彼女に色々と提案や案内をしてもらって”久々にアウェイでゲストをやらせてもらってるな”と感じた。

なんだか新鮮で気分の良い夜だった。

ビーチに面したそのオシャレな店からライトアップした広安里大橋が見渡せた。木曜日の夜。店内には1,2組のお客しか入ってなかった。彼女と静かに語り合うにはおあつらえ向きだ。ビーチを望む半円のような形のテーブルに並んで座った。

ホワイトビールを飲みながら、釜山に来る前に見たもう1本の韓国映画の話をした。余談だが、私は海外に行く前に、その国や土地に関連する映画を見てイメージを膨らますことが大好きだ。

「その日の雰囲気」という韓国映画は、同じくソウルから釜山に向かう新幹線の中で、ナンパ師の主人公が隣に座ったヒロインをナンパする話。韓国の新幹線はゾンビもナンパも何でもござれだ。

「今日僕は君と寝るつもり」などとナンパして、ヒロインから敬遠される主人公。しかし、偶然にも釜山で同じ目的があり、色々とすったもんだした挙句、最終的に寝る。もっと言うとラストは恋に落ちる。

端的に言えば、単純なコンテクストのラブコメ映画だけど、釜山でナンパする予定の私にとっては、十分楽しく興味深い映画だった。

「僕は別にワンナイトが悪いとは思わない。映画の彼のように遊びのつもりが本気になったこともある」

これは嘘じゃない。ナンパ師風に言うと、ただの即や準即(1,2度目のデートで寝ること)のつもりが、恋愛感情につながったことは何度かある。大昔に台北のクラブでナンパした今の台湾人彼女だってそうだ。

私には、確信にも似た何かがあって単刀直入に聞いた。

「君はワンナイトどう思う?」
「私も別に悪いことだと思わないよ」

恐らくだけど、今夜は彼女と一緒に過ごせそうだ。対面でプルコギを食べていた私たちは、今は膝と膝がくっつく距離でビールを飲んでいる。

この映画の中でナンパ師の男は、ヒロインと寝る前にどうして自分と寝ようと思ったのか聞く。そこでヒロインはこう答えた。

「軽そうに見えて付き合う間は一人だけを思ってる。子供と遊んでるときも笑顔に嘘っぽさがない(中略)そんないいひと」

この言葉をすごく気にいって、今回の釜山ツアーの個人的なテーマにしていた。”それが誰であろうと、目の前にいる人にエネルギーを注ぐことに集中する”と。

そして、私は目の前にいる前日に出会ったばかりの韓国人の彼女のことだけを考えていた。理知的だけど、どこか抜けてる。しっかり話を聞くし、しっかり話せる。素直。ニコニコと笑うと目がなくなる。

ナンパ業界では、女性と寝るために「好きだ」とか「付き合おう」とか言うのは”色恋”と呼ばれていて、私は使わない。

人間関係において、無責任な言動をするのは趣味じゃないからだ。

目の前にいた彼女が欲しくて堪らなくなっていた。「もう君のことほとんど好きかも」みたいなことを言った。抱きたいから言ったわけじゃない。本心だった。

これが”その日の雰囲気”なのかもしれない。彼女は私を見つめる。いつもの理知的でもあり聡明な目つきが変わった。その目はとても官能的で色っぽかった。キスをする。

「韓国ではこういう場所でキスしても大丈夫なのかな?」
「あんまり良くないけどあなたとなら大丈夫」

そんなことを照れながら言う彼女は最高にキュートだった。

「今晩は君と一緒にいたいんだけど、この近くで泊まる?それとも僕の部屋に来る?」
「あなたの部屋でいいよ」
「わかった。僕は君が嫌がることはしないから。心配しなくていい」
「わかってる。心配してないよ」

店を出ると、小雨よりは強い雨が降っていた。彼女は地下鉄に乗ろうと言った。雨は嫌いだし、料金の検討がつかなくても普段ならタクシーに乗る場面だ。

それでも釜山の思い出に、こういう場面があってもいいかなと思って、カバンを傘代わりにして彼女と駅まで走った。

残念ながら終電はすでに終わっていて、タクシーで帰った。

ホテルについてトイレから戻ると、彼女が何やら探していた。スマホがないという。一緒に探してみるが出てこない。きっとタクシーに置いてきたんだという。

彼女は私の部屋からタクシー会社に電話して、事情を伝えた。私は彼女の肩を抱きながら「僕はラッキーだから。大丈夫」と言った。

そのまま彼女を抱いた。彼女も激しく私を求めてきた。

その後も彼女は、タクシー会社やドライバーとやり取りをしたがスマホはないと言う。可能性は低いが、ホテルに入る前に寄ったコンビニも確認しようと提案して、2人でコンビニに戻ってみたりもした。

翌日、釜山には台風が来る。そして、釜山ツアーが始まる。雨足はさっきよりも強くなっていた。結局、彼女のスマホは出てこなかった。

****
4日後。釜山ツアーが終了した。ツアーが終わったあとは、1人で大田か大邱など地方都市を巡って北上し、翌週末はソウルで過ごす予定だった。

だが、私はツアー後も釜山に残り、彼女と車でカラフルな街並みの甘川文化村でデートしたり、オススメのバーで酒を飲んだりした。

飛行機でソウルに向かう際は、出勤する彼女の車で、出会った金海国際空港へ行った。

ソウルから台北に帰る予定だったが、予定を変更してKTX(新幹線)で釜山に戻り、再び逢瀬を楽しんだ。彼女は、私のためにホテルの部屋を用意してくれていた。

ツアーで泊まっていたモーテルよりもずっと良い部屋だった。韓国人女性の男前な一面は、とても素敵だ。

ちなみに、KTXの横の席は美女でも、ゾンビでもなかった。

初めて釜山の地を踏んでから2週間ほどが経過していた。彼女と出会った金海国際空港から台北に帰る。

その日も彼女は、出勤前にホテルまで車で迎えに来てくれて空港へ向かった。一緒にいる間中、時間とか関係なく求め合った。

フライトの時間。わざわざ彼女は仕事の休憩をとってくれて、出国ゲートまで送ってくれた。こうして見送ってくれる女性がいると、それだけで素晴らしい旅行だったように思う。

「最後にキスしていい?」と聞くと、照れながら「ダメ」と言われた。ここが彼女の職場であることを忘れていた。

機体は離陸する。

窓際に座っていた私は見えなくなるまで、眼前に広がった釜山の街を眺めて続けていた。

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